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できそこないの男たち

福岡伸一  光文社新書

聖書ではアダムのあばら骨からイヴが作られるが、実際には女性が先で男性が女性から作られた。

本来はどちらが先に作られたかと言うだけのことで、後から作られたから「できそこない」とは限らない。先に出来たと思っていたら実は後から出来ていた悔しさからくる僻み根性がこの題名に現れているように感じる。

しかし、発生の途中で全ての胎児の足の付け根に割れ目ができ、それが男性遺伝子(Y遺伝子)を持っているものだけ閉じ合わされると言うのは驚いた。(そうか私も昔は女だったのか)

しかし、有性生殖が始まる前は、生物は全て単為生殖だったのだから、これをメスであったと言うのは、誤りとは言えないが、厳密にはこれは中性で あって、有性生殖が始まったときに初めてメスとオスが生まれたのだと言うべきではないか。著者の言い方はまたもや一方的な感情(悔しさ)が入っているの だ。

さらに、最初に有性生殖を行ったのは単細胞生物の筈だ。「接合」と呼ばれる。この場合はメスもオスも同じ形をしており性差はない。ただ単細胞同士で遺伝子の交換をしているらしい。

植物にもメスとオスがある種類がある。銀杏などがそうだ。実のなる木とならない木がある。このような場合にはY染色体はどうなっているのだろう。

また、魚や鳥には途中で性が変わるものがあると聞いた。種名は失念した。

ウミガメは孵化する時の温度によって性が決まる。この場合もY染色体がどうなっているのか気になる。

本書で取り上げられているチャイロコメノゴミムシダマシという小さな甲虫はX染色体とY染色体を持ち、人類と同じようにこれらがメスかオスかを決める。しかもY染色体はX染色体よりも遥かに小さい。

これは私にはショックだった。「そんなに昔からY染色体は小さかったのか?」

進化の点では、甲虫は人類の遥かな先祖だろう。すると、Y染色体はオスができた時点から小さかったのか?そうだとすると、オスが絶滅するのは遥かに先であろう。何も心配する必要はなかった!

しかしそうすると、銀杏やウミガメのY染色体も小さいのか?成長の過程で性転換する動物の染色体はどうなっているのか?疑問は次々に湧いてくるが、この本にその回答はない。

単為生殖と有性生殖を繰り返すアリマキの性染色体については触れている。大変興味深い。

ジンギスカンの子孫が1600万人いる、と言う話には笑ってしまう。男系相続の怪しさが白日の下に晒される。著者は明確に指摘していないが言いたいことは明白だ。

最後の「快感説」には疑問を持つ。

我々が女性を愛し、尊敬し、一緒に住みたいと思う理由がもし「快感」だけならば、女性を選択する必要はなくなる。誰でもその時には略同じ快感を与 えてくれるだろう。しかし、我々はそれだけでは満足できないのだ。だから、延々と理想の女性を探し求めるのではないか?男が「命を捧げるべき女を探す」の は「快感」だけでは説明できない。それはもっと根源的なものに突き動かされているからだと思う。

生物の宿命は子どもを育てることだろう。その時にライオンのようにオスが知らん振りをしてメスだけで子どもを育てるよりも、オスも子育てを手伝った方が子どもの生存率が高くなることは明らかだ。するとオスがメスの子育てを手伝うのは進化の法則に適っていることになる。

しかもその時、オスとメスが異なった特長を持ち、異なった強さを持っていた方が、環境に対する変化への適応範囲が広くなるだろう。つまりそのような種が生き残るだろう。

男は決して出来損ないではない、男は男の特長を持って女と子どもを守ればよいのだと私は思う。

触れなかったが、本書で触れている、Y染色体の旅路も興味深い。日本人のルーツが分かる。

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コメント

昨日この本を買って読み始めました。読みやすくて面白いです。ご紹介ありがとうございました。

投稿: 花子 | 2009年2月16日 (月) 14時05分

今日ようやく読み終わりました。自分には縁のない研究者の世界を知る事ができて面白かったです。日本人のルーツが知りたくて読み始めた本でしたが、「Y の旅路」の章にはあまり詳しく書いてありませんでしたので、この章で紹介されている「DNA でたどる日本人10万年の旅」という本を買って読んでみようと思います。

投稿: 花子 | 2009年3月19日 (木) 10時48分

「DNA でたどる日本人10万年の旅」私も読んでみたいと思い、アマゾンの買い物籠に入れたのですがまだ発注していません。お読みになったら感想をお聞かせ頂けると幸いです。

投稿: らんる | 2009年3月19日 (木) 11時04分

私の感想など待つまでもなく、下記の素晴らしい感想をお読み下さい。
読む前からもう読んだような気になってしまいました。

http://sicambre.at.webry.info/200804/article_11.html
http://sicambre.at.webry.info/200804/article_12.html

読む予定の本がいろいろとあって私が実際にこの本を読むのはいつになるかわかりません。

投稿: 花子 | 2009年3月20日 (金) 11時26分

私事ですがこの記事を読ませたい男性の顔が何人か浮かびました...

投稿: ガンジ | 2009年8月26日 (水) 01時22分

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