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トルコ女性よ、落ち着け

先日NHKの「沸騰都市イスタンブール」を見た。興味深かったのはトルコにおけるイスラム教の現状である。

トルコはイスラム教国であったが、80年前にケマル・パシャが政教分離したのはご承知の通り。しかし、先年トルコに行った時にはガイドが「汚職が 多い」と嘆いていた。NHK番組でも、国有地を不法占拠した住宅の取り壊しを扱っていたが、不法占拠自体はよろしくないが、その処置は真に官僚的な冷たい もので、これでは下層に政府に対する憤懣が蓄積するのは当然だと思えた。

ケマル・パシャは政教分離を憲法で定め、しかもその条文の修正はできない、と憲法に明記した。今起っている運動は、この憲法を改訂し、イスラム教を国教に定め、イスラム教専制を復活させようとするものだ。

もともとトルコはイスラム教国であったので、国民の大多数は今もイスラム教徒である。政治から切り離されたイスラム聖職者に不満が溜まっていたこ とは容易に想像できる。しかし、イスラム聖職者に政治権力を持たせようとする一般大衆の存在は理解に苦しむ。しかし最近の選挙で、イスラム教の政党が議会 の多数派を占めることになった。

最も理解しにくいのは、この運動が女性のスカーフ着用問題をきっかけにしているらしいことだ。先ず大学でのスカーフ着用を認める法律が議会を通 過、これに対して裁判所が違憲判決を出すとこれに抗議する大型のデモが各地で頻発している。これに多数の女性が参加して気勢を上げている。

私はここで分からなくなる。

イスラム教は女性を差別しているのではなかったか?

最初は着色されたスカーフを許可しても、イスラム教が力をつけるに従って、黒一色に制限されて、そのうち、目だけしか出せなくなるのではないか?トルコ女性はそんなことを本当に望んでいるのか?

女性の教育も制限しているのが普通のイスラム教国ではなかったか?現在は大学への女性の入学が許されていて、それが当たり前で何時までも続くと思っているのだろうが、大学入学が禁止されることは絶対にないのか?女性の高校への進学が、これからも本当に保証されているのか?

私にはトルコの女性が余りにも無防備に見える。イスラム専制の恐ろしさを知らないのではないか?

これはトルコ女性の自滅行為ではないのか?現在の政治に対する不満に目を奪われて、さらに大きな不幸を呼び込もうとしているのではないか?

イスラム聖職者やその取り巻きが、政府に対する民衆の不満を自分達の利権拡大に利用しようとしているのだとすれば実に卑劣な動きだが、迂闊にその扇動に乗るトルコ女性ももう少し慎重になれないのだろうか。

しかし、何といっても先決は、トルコ政府が現在の腐敗を根絶し、社会保障を充実させて一般大衆の不満の原因を解消させることであろう。そうしなければ、EU加盟も実現しないだろう。

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コメント

(先ほど途中でお送りしてしまったようです)
イスラムの専制とか、イスラムが女性差別である、といった解釈は西洋世界から見た一方的な偏見ではないかと思えます。エマニュエルトッドの「文明の接近」を読むと、イスラムは大家族主義であり、むしろ一旦家族の中に入ると女性を大変に尊重してくれるという意味で女性を保護してくれる側面があるとのことです。オルファンパムクの「雪」でも女性のスカーフが大きな問題としてテーマとなっていました。イスラム教徒の女性はスカーフを着用する方が彼女らの生活、心情に合致するのだと思います。もちろん、ドイツなど西欧に移民したトルコ人の中ではそうした伝統が逆に束縛と感じられ葛藤がある用です。結婚前に性交渉を持ったために父親に娘が殺されるなどの事件が確かドイツであったという記憶です。
ドバイなどのイスラム諸国ではキャリア女性も普通にスカーフを着用しています。パキスタンですがブット女史もそうでした。ですので、女性がスカーフをとって金髪に染めたりするのはイスラム諸国の中では異例のようです。
ですので、イスラム教徒である女性がスカーフを着用したり、自分の体を見せないようにしたりすることには彼女なりの合理性があり、決して強制されているものでもないと思われます。

投稿: 奈々氏 | 2008年7月 6日 (日) 00時04分

政教分離は民主主義の基本だと思います。イスラム教グループはイスラム教により国を統治することを目的としています。これは西側からの偏見ではなく、事実であると私は思います。トルコは国民の大部分がイスラム教徒でありながら、政治から宗教を分離した唯一のイスラム教国です。

ことがスカーフだけに留まるなら別に問題はありません。ロシアはイスラム教国ではありませんが冬女性がスカーフを巻くのは普通です。日本でも見かけます。これを問題にしようとは思いません。

私はトルコの政権をイスラム教で独占しようとしている動きに利用されないで欲しいと言っているのです。

多くのイスラム教国では、女性の高等教育が制限されています。私は女性が高等教育を受けられなくなるのは良くないと警告しているのです。

投稿: らんる | 2008年7月 6日 (日) 11時09分

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