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[書評]蒼穹の昴 浅田次郎

浅田次郎さんよく勉強したなぁ、というのが第一印象。そのために実に内容が濃い、面白い小説になった。時代は中国清朝末期。日清戦争前後。

表面的な主人公は一応、宦官春児と官吏登用試験を一位で突破する梁文秀と言うことになるが、真の主人公は恐らく西太后(清朝末期の実力者・女性) であろう。彼女については色々おどろおどろしい噂があるが著者は一切取り上げていない。大変複雑で魅力的な女性として描いている。

印象的なのは、宦官の実態と科挙(官吏登用試験)を赤裸々に書いていることだ。私はこの本で始めてその実態を知った。これを知るだけでも一読の価値がある。

春児と梁文秀にはモデルがあるようだが、小説とはモデルとはかなり違っているようだ。純粋に小説家による創作と思ってよいだろう。一方実在した人物も出てくる。曽国藩、李鴻章、袁世凱、等。しかし、康有為の名は私は知らなかったが実在の人物のようだ。

清を作ったのは現在の東北地方を根拠地とする、女真族または韃靼族と呼ばれた騎馬民族である。当然文字も文化も中国とは異なる。例えば辮髪は彼らの習俗であって、中国の習俗ではない。このような、韃靼文化と中国文化の違いが克明に書いてある。これからすると現在の中国政府が異民族・清の領土であったチベット・ウイグル・(内)モンゴル・台湾を「中国固有の領土」とするのは、ご都合主義としか思えない。

さて、この小説の内容を一口で言えば、清国の「失敗した明治維新」である。清国に比べて日本は幸せであった。しかし日本の現在の政治家、経営者がその幸運に感謝しているようには見えない。不幸なことだ。そのことが日本の将来を暗示しているように感じる。

終わりの方で少年時代の毛沢東が出てくるのは作家のお遊びかサービスか?

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コメント

こんばんは。はずかしながら、さきほどこの小説を読み終えました。
毛沢東の件はお遊びではなく、むくわれなかった王逸のこれからを書いたものでしょう。白太太が王逸へ言った予言の回収(つまりこじつけ)、もしくは続編の「中原の虹」のさらなる次回作への複線かもしれません。
wikipediaになりますが「中原の虹」の項に「朝日新聞(2007年12月23日朝刊)のインタビューで続編の構想を考えており、2年後には始めたいと語っている。」と書いてありました。
最後にいきなり毛沢東が出てきたことからこじつけ説も否めませんが(^^;

投稿: | 2009年1月16日 (金) 01時39分

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