« 地獄のドバイ、峯山政宏、彩図社 | トップページ | [書評]蒼穹の昴 浅田次郎 »

発達障害の子どもたち 講談社現代新書 杉山 登志郎

以前から「自閉症」というものに興味があった。「一体何なのだ?」というだけの興味。身近に該当する子がいないので、接したことがない上に何か大変変わっていて理解できない。そこでこの本を読んでみた。

なるほど、知らなかったことが色々書いてある。大変ためになった。

1.遺伝子と環境の影響の度合いを統計的に調べた研究がいくつかある。それによると、
成人における軽犯罪の発生率は生物的な素因の方が圧倒的に高い(スエーデンの3歳以前に養子になった男子862人にの調査結果)。
非行の罹病率は生物的素因の方が環境因よりも圧倒的に高い(オーストラリアの一卵性双生児と二卵性双生児2682組の調査結果)。

つまり、軽犯罪や非行の経歴がある人との間に生まれる子どもは危険だ。(これを差別と思う方はどうぞご結婚ください。自己責任で。)

2.少年非行を犯すものの中で知能が正常なものは少なく、殆どがIQ70~IQ84(これを境界知能と言う)である。彼らは学習が遅れている場合が多く国語力が足りないために内省力が不足し、悩みを保持できないためであると思われる。
わが国では14%の子どもが境界知能であるが、これは小学校時代の指導によって改善可能である。知能指数は固定的なものではない。

3.自閉症
(1)自閉症の症状は次の3つ。社会性の障害、コミュニケーションの障害、想像力の障害(ここから「こだわり行動」が生まれる)。
(2)逆転バイバイ
乳児期の後半から子どもは「バイバイ」と手を振る。自閉症の子どもも「バイバイ」をするが、それは掌を自分の方に向けている。これは人の「バイバ イ」を機械的に真似しているからであって、人の体験に自分の体験を重ね合わせることができないからである。同じように、ミルクが欲しい時に「ミルクが欲し いの?」と疑問文で自分の要求を表現する。これも周りから「ミルクが欲しいの?」と聞かれる事を機械的に真似した結果である。

4.アスペルガー症候群
知的障害を持たない自閉症グループのことで、高機能広汎性発達障害とも言う。著者は自閉症と区別することは難しいと言っている。アスペルガー症候群が有名になったのは、多くの不可解な殺人事件による。(例えばレサーパンダ帽を被った青年による女子大生通り魔殺人)

アスペルガー症候群の子どもは集団行動が取れない。したがって小学校に入った時点で問題を起こすようになる。また愛着の形成が遅れるので、虐待を 招きやすい。不登校から引きこもりになることもある。性同一性障害になる子どももいる。対人関係の仕事に就くとうつ病になることが多い。工場労働者になっ た者は安定している。迫害体験も多い。

母子ともにアスペルガーの治療を受けるようになることも稀ではない。これは子どもが治療を受けている内に「私もそうではないか?」という申し出でがあって母親を診断した結果である。

早期治療を受けた方がそうでない者よりも、青年期の適応が明らかに良好であることが認められている。

5.ADHD(注意欠陥多動性障害)
その症状は、多動、不注意、衝動性であり、今日本の学校はどこでも他動児で溢れている。

多動児は愛着形成の遅れ、叱りすぎによる自己イメージの悪化、大人に対する反抗、を呼びやすいが、8割で薬物療法が有効である。また、おだてまくる必要がある。

6.子ども虐待
虐待やネグレクトを継続的に受けた子どもは衝動や怒りのコントロールができ難くなる。そしてADHDと同様の症状を示しやすい。さらに、一般的な発達障害よりも子ども虐待の方がより広汎な脳の発達障害をもたらす。

このような虐待を受けた子ども達の治療に際しては、子どもが安心できる安全な環境に移すことが最重要なのだが、日本ではこれが満たされていない。 保護された被虐待児の8割が虐待された家庭に帰されている。これは保護する場所がないのでやむを得ずそうしているのだ。しかも日本では多人数の児童を収容 する養護施設しかない。これは先進国では日本だけに見られる特異例である。

|

« 地獄のドバイ、峯山政宏、彩図社 | トップページ | [書評]蒼穹の昴 浅田次郎 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/517191/41690947

この記事へのトラックバック一覧です: 発達障害の子どもたち 講談社現代新書 杉山 登志郎:

« 地獄のドバイ、峯山政宏、彩図社 | トップページ | [書評]蒼穹の昴 浅田次郎 »